琉球新報(夕刊)2005年11月8日 火曜日
公務執行妨害 僧侶逮捕の波紋
「運動弾圧」と平和団体
沖縄署「取り締まる意図ない」
 日本山妙法寺(東京都)の僧侶、木津博充容疑者(六九)が沖縄署に公務執行妨害の現行犯で逮捕されてから、十日が経過した。この間「平和運動への
弾圧」「不当逮捕だ」と釈放を求める抗議の動きが、県内の平和団体にも広がっている。沖縄署は「平和運動を取り締まる意図は毛頭ない」と強調しているが、支援者たちは、東京都立川市で起きた自衛隊イラク派遣反対ビラまきの逮捕事件など、「全国的に警察の平和運動への不当介入が広がっている」と警戒する。
 ■発 端
 十月二十九日、日本山妙法寺の一行は、嘉手納基地第二ゲート前で終日の座り込み行動をしながら、ゲートから出てくるドライバーに英文のちらしを配っていた。沖縄署は「道路中央でビラを配っている」と通報を受け、午前十一時ごろに地域課の警察官がパトカーで出動。車道でのちらし配布はやめ、車道の駐車車両も移動するように指導した。
 同署は逮捕容疑について、警察官が次の盗難事件の発生現場に向かうためにパトカーを発進させようとしたが、木津容疑者が助手席に手を掛けたり、前輪とこうりん間に足を差し挟むなどして妨害したと説明している。木津容疑者は警察の取り調べに対し、完全黙秘を続けたという。
 新田朝栄副署長は「軍道での配布は危ないのでやめてもらった。それで済んだはずなのに、別の事件現場に行くのを強行に止める行為は、社会的にも許されない」と述べる。
 ■根底に不信感
 これに対し三宅俊司弁護士は「(木津容疑者が)パトカーの中の警察官に説明を求めていたら、急発進して危険にさらされた。危険行為を隠すためのでっち上げ容疑だ」と、全面的に「冤罪」として争う構えだ。
 弁護は辺野古訴訟の弁護団が兼務し、釈放を求める支援には反戦地主会、嘉手納、普天間の両爆音訴訟団などが駆け付ける。波紋を広げる背景には、逮捕当日が在日米軍再編の中間報告があった日であり、その反対運動に対しても警察が介入してくるのではという不信感が根底にある。
 辺野古で海上阻止行動を繰り広げてきた平和市民連絡会の平良夏芽共同代表は「われわれの中から逮捕者が出ると思っていた。今回の逮捕は偶然でも人ごとでもない。平和の訴えへの重大な弾圧だ」と語気を強める。
 今回の事件について琉球大学の森川恭剛助教授(刑法)は「人権的にも、一人の人間を長期間拘束できるような被害の実態はない」と、拘束の継続に疑問を呈する。その上で「今回の出動は道交法違反の取り締まりのためだろうが、それがなぜ公務執行妨害にまで発展したのか。現場の対応を含めて検討が必要だろう」と指摘する。(中部報道)
お坊さんがビラ配布後に公務執行妨害で、今手錠腰ひもを付けられて・・・真相は? @ A B
木津さん19日ぶり釈放 公務執行妨害容疑を不起訴(琉球新報より)
19日ぶりに釈放され、支援者らから拍手を送られる木津博充さん(中央)=17日午前10時10分ごろ、那覇地裁沖縄支部前

  【沖縄】那覇地方検察庁沖縄支部は17日午前、緊急出動しようとしたパトカーの公務を妨害したとして沖縄署に公務執行妨害の容疑で逮捕、送検された日本山 妙法寺僧侶の木津博充さん(69)を不起訴処分にする方針を固め、釈放した。同日中にも処分決定が出される見通し。先月29日に逮捕された木津さんは今月 18日で拘置満期を迎える予定だった。
 那覇地検の浦田啓一次席検事は「実態など総合的にみた結果、起訴する必要はないと判断した」とコメントし た。沖縄署の仲宗根孝署長は「相手(僧侶)がパトカーの進行を約20分間妨害したことで逮捕した。市民の訴えを聞いて正当に対応したまで。それを見逃して いたら市民の信頼を失う。僧侶の釈放は地検の判断であり、警察としては何も言う立場にない」と話した。
 この事件では、木津さんが所属する日本山妙法寺や平和団体が「逮捕はビラ配りを取り締まるための口実。平和運動の弾圧だ」と県警を批判し、抗議と釈放を求める運動を展開していた。木津さんは逮捕から送検後の取り調べまで、一貫して黙秘していた。
 午前10時前から沖縄市の那覇地裁沖縄支部前で支援者集会が開かれたが、19日ぶりに釈放された木津さんが姿を見せると、拍手が起こった。
 木津さんは「国家権力によるでっち上げは、こんなふうに作られるのかと実感した。米軍再編協議に絡み、平和団体を委縮させるもので、平和運動全体に対する弾圧の序章にすぎないと思う」と危機感を示した。
 弁護団の新垣勉弁護士は「拘置満期の前の釈放は、当初から警察への公務執行妨害がでっち上げで(起訴するのに)無理な側面を持っていた」と指摘。「久し く沖縄でなかった警察による弾圧。全国でもビラ配りなどが検挙されており、全国的な流れを背景に治安当局の焦りが見える」と強調した。
 事件は10月29日に発生。同署の説明によると、米軍嘉手納基地第2ゲート前でビラを配っていた木津さんらに署員が「交通の妨げになる」として配布をや めるよう指導した後、署員が盗難現場に向かうためパトカーを発進させようとしたが、木津さんが発進を妨げたため逮捕したという。

(11/17 14:03)

2005年11月18日(金) 朝刊 30面 沖縄タイムス
「逮捕はでっち上げ」/釈放された僧侶が会見
 反戦のビラまきをしていた日本山妙法寺(東京)の僧侶(69)が、指導に来た沖縄署のパトカーの発進を妨害したとして、公務執行妨害の疑いで逮捕、拘置 された事件で、釈放された僧侶が十七日、那覇市の県庁記者クラブで会見し、逮捕された際の警察官とのやりとりについて語った。

 僧侶は「逮捕はでっち上げ。これがまかり通るなら日本中の平和運動が大変なことになる」と訴えた。沖縄署は本紙の取材に「逮捕事実を言っているまでで、平和運動の弾圧という考えなど一切ない」と強調した。

 僧侶の話を要約すると、逮捕までの経緯はこうだ。

 これまで十八回、続けてきたビラまきを止められたため、パトカーの助手席側に座って警察官に理由を尋ねた。両ひざが車体についていたため、パトカーが急に動きだした際に転倒。謝罪を求めたが、応じないため、仲間に理解を求めようと道路の反対側に戻った。

 逮捕はその後しばらくしてからで、警察官とのやりとりは計五分程度だったという。「パトカーの前輪と後輪の間に足を入れたり、助手席の窓にぶら下がったりしたことはない」と話す。

 一方で沖縄署の仲宗根孝署長は「パトカーが窃盗現場へ向かおうとした際、再三の説得にもかかわらず、進行を約二十分間妨害した。妨害されたのは警察の方で(第三者の)目撃者もいる。なぜ政治問題にするのか分からない」と話した。

 那覇地検沖縄支部は十七日、不起訴処分(起訴猶予)にする方針を決め、僧侶を釈放。地検は「僧侶に初めから妨害しようとした意図はなく、現場での行き違いによる偶発的な行為だったとみている。総合的に判断して起訴するには至らないと判断した」としている。